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Case Studies

取組事例集

丹波市有機の里づくり推進協議会

【基本情報】丹波市有機の里づくり推進協議会
〒669-4192 兵庫県丹波市春日町黒井811番地 丹波市産業経済部農業振興課
電話 0795-88-5028

【取組内容】
丹波の有機農業の歴史
分水嶺がある兵庫県の真ん中あたりに兵庫県丹波市はあります。丹波の有機農業の歴史は約50年にさかのぼり日本でも数少ない古くから有機農業が実践された地域のひとつです。有機農業運動の特徴のひとつに「提携」という消費者と生産者が、単なる「商品」の産地直送や売り買いではなく、人と人との友好的なつながりを築くなかで進める生産と消費の形態があります。
そこでは、生産者も消費者も、農法を変革するだけでなく、作付、収穫、選別、包装、配送、そして食卓での食べ方に至るまで、消費者と生産者がともに学び合い話し合って理想に向かう有機農業が実践されてきました。神戸および京阪神の消費者グループと「提携」をしてきた丹波の生産者グループが1975年に丹波市市島町にて「市島町有機農業研究会」を発足させたのが記録上の丹波の有機農業の歴史のはじまりといえます。
「提携」は世界から注目を集め、各国から視察があり、ここから世界へと「提携」の思想が伝わったと言っても過言ではなく、アメリカではCSA(Community Supported Agriculture)、フランスではAMAP(Associations pour le maintien d’une agriculture paysanne)と世界に広がっています。その起源といえるひとつが丹波の「提携」でした。
その後、旧市島町が政策の中に「有機農業」を入れて「有機の里いちじま」として有機農業の推進を行い、1992年には市島町直営堆肥センターが稼働、2001年には旧市島町が第7回環境保全型農業推進コンクールで大賞となる農林水産大臣賞(近畿地方)を受賞、2004年に環境保全型農業等推進特区に認定、特定非営利活動法人「いちじま丹波太郎」発足、町との協働事業体とも言うべき役割を担いながら、現実は小説より奇なりという言葉どおりドラマチックな紆余曲折がありながらも「有機の里いちじま」が推進してきました。
そして2004年、丹波市の合併により有機JAS認証取得補助制度を含む旧市島町の「有機農業」政策は丹波市の政策として引き継がれました。その後、小祝正明氏提唱のBLOF(Bio Logical Farming:生態系調和型農業理論)勉強会がはじまり、2008年には勉強会開催を主な目的として丹波市有機の里づくり推進協議会が官民協働で発足しました。

過去からバトンを引き継いで未来につなぐ
有機農業のパイオニアとも呼べる人たちが丹波の有機農業の歴史をつくってきたこともあり、有機農業に関心を持つ次世代の若者が丹波をたずね、学び、就農するという循環が丹波にできています。2019年には新規就農を目指す人を対象に1年間かけて有機農業の栽培技術や農業経営が学べる丹波市立農の学校が設立されました。丹波にはレベルにあわせて、農の学校、有機農業教室、BLOF勉強会など多様な学びの機会があり、丹波市有機の里づくり推進協議会が主催するBLOF勉強会ではベテランも含め有機農家たちがともに学ぶことで、丹波の有機農業の推進を後押ししています。
その成果として、毎年徳島で開かれる「オーガニックフェスタ」栄養価コンテストではこれまで全部門、こかぶ部門、小松菜部門、赤かぶ部門、万願寺部門、きゅうり部門、黒枝豆部門、なす部門、ブロッコリー部門で丹波の有機農家が最優秀賞を受賞、人参部門での団体賞や白菜部門での連続受賞なども含め快挙をなしとげています。現在、丹波市の有機農業取組面積は156ha(有機JAS認証取得60ha)、有機農業者数83戸、有機農産物の販売額は2億400万円、全国の有機農業の実践の中でも成果を出していると言えます。(2021年時点の農林水産省発表資料)

今後の展望
これまでの実績も後押しし丹波の有機農業はブランド認知されており、近郊の消費地に直接販売が成立する状況ですが、展示会等で大口の相談が入っても対応できないのが課題でした。あわせて、今後、丹波をめざし就農する未来の有機農家のことも考えると販路開拓が課題といえます。丹波市有機の里づくり推進協議会では、丹波有機米研究会による有機米、畑家族による有機黒枝豆、丹波人参クラブによる有機人参と人参ジュース、市島有機農産物生産出荷組合による有機農産物など、生産者グループによる加工品の開発とグループ出荷体制を整えています。それによって比較的まとまったロットでの出荷も対応できるようになっています。今後は、大口ロットにも対応できるさらなる栽培技術の向上とグループ出荷の体制を整えていきます。また、丹波市によるオーガニックヴィレッジ宣言では学校給食のオーガニック化を含め「有機の里」にふさわしい有機農業推進をすすめています。