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Case Studies

取組事例集

農事組合法人 有限会社 茶のみやぐら

【基本情報】
農業生産法人 有限会社 茶のみやぐら
〒529-1842 滋賀県甲賀市信楽町下朝宮39-1
電話 0748-84-0405
ホームページ www.chanomiyagura.com

【取組内容】
日本最古の茶産地、信楽町朝宮
京都府と滋賀県の県境にある標高400メートルの霧深い茶産地、信楽町朝宮の茶の歴史は1200年にものぼります。日本最古の茶産地と呼ばれる朝宮茶は、その昔、比叡山に延暦寺を開いた最澄が中国から持ち帰った茶の種が朝宮に伝わったことが起源と言われます。日本五大銘茶のひとつに数えられる朝宮茶が育まれるこの地は高い山の中の盆地にあり、夜は近畿地方の中でも最も厳しい寒さを迎え、昼夜の寒暖差が非常に大きな地域です。その特徴ある気候によって朝宮茶は、日中に光合成をして栄養分を蓄えますが、夜の冷え込みで成長が抑制され、使われなかった栄養が茶葉に多く蓄え続けられることで、朝宮茶特有の上質な香りと深い味わいを特徴に持つのです。見渡す限り続く傾斜地にある茶畑では、新茶の時期には地域の方々とともに昔ながらの伝統的な手摘みによる茶摘みの風景もみられます。

古き伝統と歴史を大切に、次の時代へ
茶園を継ぐ2代目の樋口昌直さんは、朝宮の美しい景色を一杯のお茶から感じてほしいと言います。「茶のみやぐら」は1967年に先代が朝宮の地で創業し1200年の朝宮の歴史と伝統を受け継いで「自分たちの手で育てた茶葉を自分たちの手でお客様にお届けする」をモットーに、約6haの茶園とともに、製茶場、直営店舗を持ちます。先代から経営を引き継いだ樋口さんは先代の教えとともに、ときに厳しくときにやさしい雄大な自然からの教えを受けて、古き伝統と歴史を大切にしながら新しい時代への変革と好奇心をあわせもつ若き経営者です。朝宮茶は自然の力を利用してできている。一方で、標高の高い傾斜地の産地では「遅霜」という現象が起き、新茶の芽に霜が降りるとその芽が枯れてしまったり、集中豪雨などの災害で山が崩れたりすることもあります。先代の世代がよく「自然には逆らえない」と口々に言うのを聞いて育ちましたが、「自然には逆らえないなぁ」とあらためて実感するといいます。自然には助けられたり、脅かされたりの繰り返し。樋口さんは、これまでは自然の脅威を克服して、打ち勝ってこそ経営の安定に繋がるという考え方だったそうですが、今は自然に配慮し、環境に負担をかけないようなやり方を何より大切にするようになったと言います。

有機JAS認証を取得し知ったオーガニック
「茶のみやぐら」では2019年に有機JAS認証を取得しています。問屋さんやお客さんのニーズが多かったことから有機JAS認証について興味を持ち始めたとき、農業改良普及員が連れてきたのが農林水産省施策の6次産業化プランナーでした。国際動向にも精通していた彼女から認証取得のアドバイスだけでなく世界の動向や国際的なオーガニックの定義や原理、オーガニックとSDGsは関係が深いことなどをおそわりました。朝宮のある滋賀県は全国に先駆けてSDGsを県政にとりいれた県でもあり、その一環として有機産地形成にも理解がありました。朝宮の茶農家が集まって産地の未来を考える勉強会を開催し、その後、信楽町茶業協会によって朝宮茶有機栽培研究会が設立されるに至りました。オーガニックは農法や規格のことだけでなく、人も環境も地球も健康であること、生態系を守り育むこと、バリューチェーンに関わる人たちみなが公平であること、そして次世代に配慮した責任ある選択をすることなど、持続可能な農と消費のありかたそのものであると知りました。自分の利益だけを考えていてはダメ、お茶のことだけではなく、周りの環境やもっと全体のことを考えなければいけない。山の中の小さな産地の生産者ですが、お茶は生きものだと思って接しています。お茶を通じて自然を感じてほしいと樋口さんは言います。

「茶のみやぐら」のこれからの展望
「茶のみやぐら」では有機JAS認証の煎茶やほうじ茶をはじめ、茶葉を使ったロールケーキやプリンなどのお菓子を製造し直営店舗やオンラインショップで販売しています。今後はさらに商品開発に力を入れるとともに、オーガニックの展示会などにも出展していきたい。それによって、より多くの人に朝宮茶を知ってもらい、「茶のみやぐら」のファンを増やしていきたいと今後の展望を語ってくれました。